研究不正に怒る

研究者の皆様は、毎年「研究倫理をちゃんと理解しているか」という講座(eラーニングなど)を受けさせられますよね。

毎年内容が変わるわけでも別になく、大部分の人にはちょっと面倒な確認作業にすぎません。

しかし、やはりこういう取り組みをやってもやっても不正をする人は出てくるようです。真面目にやっているこっち(大部分の普通の真っ当な研究者)は腹が立ちますよ。

研究費はもちろん大学のお金の場合も、企業や財団が出しているものもありますが、最大の研究費は科研費血税なわけですし、横領などの類の不正に怒るのももちろんですが、不正には色々あります。

最近、こんなニュースがありました。

mainichi.jp

まだ37歳の若手ですが、何冊も教科書の執筆に参加していた法学部准教授のこの人物。

教科書に盗用があったとのことで大学を解雇となりました。

盗用、つまり、「この部分は他の論文や本からの引用ですよ」ということを明記せずに写し、あたかも自分のものであるかのように記載してしまったわけですね。

彼は「著作権の認識が甘かった」と言っているようですが、認識のあまさで91か所155ページ分の盗用をするものでしょうか?近畿大学といえば、近大マグロなどで有名で、近年志願者数日本一を達成した今を時めく大学です。せっかくそんな大学に就職できたというのに、不正という愚行で解雇とは、もったいない。

研究への信頼が揺らぐということも、真面目にやっている研究者からすれば大迷惑ですし、また、不正問題で腹が立つ大きな点が、それで研究費の使い方の縛りがきつくなることです。

ナンセンス極まりない縛り(各研究機関の独自ルールも多い)が、不正をする一部の不届き物のせいでどんどん増えていきます。例えば、「本当にそれが必要で、適正価格で、実際に使ったのか」をちょっとやそっとで偽造できないように確固たる証拠を提出させること。

これによって格段に面倒が増えます。

一例をあげると、学生アルバイトを雇う場合にアルバイトが集まって同時に作業し、その場に教員が立ち合わなければならない、だとか(個別に好きな場所で作業可能な業務内容なのに)。時間や手間を省くために学生アルバイトを雇うのに、アルバイトの管理業務に時間を取られます。

また、海外からものを買う、海外出張で何か買う、何かする、というのも、この「証明作業」が簡単にはいかずものすごく手間がかかったりします。

そして、「不必要に贅沢させない」「余らせて小遣いにさせない」というような意図と思われる、出張宿泊費などの厳しい金額縛り。ホテル代が高騰する中、外部資金を獲得していて必要な出張なのになぜか自腹で宿泊費の少なくない部分を被らなければならない研究者は多いでしょう。

 

不正、ダメ、絶対。

 

37歳の近大准教授氏はこの先どうなるのだろうと考えると気の毒ですが(法学部であれば法曹資格ありの可能性もあるか)、厳罰は必要でしょう。

しかし、正直言ってどれだけ厳しく縛っても悪い奴は一定数いる、というのが私の持論なので、少数であれば対策(厳しい規則)に反映させず、エラーとして無視して欲しいとも思います。100%不正撲滅を目指すのは、あまり大きな声では言えませんが不可能かつナンセンスなのではないかと。

真面目な大多数がとばっちりを受け、ますます研究しにくくなる弊害の方が大きいのではないでしょうか。それに人間、厳しすぎるとグレーな抜け穴を探してしまうものです。

 

基本性善説に立って研究費を使いやすくし、不正が発覚したら致命的ダメージとなるレベルの厳罰、少数の不届き物はどうしても発生してしまうエラーとして無視、こんな原則でやっていただきたいものです。個人的には。