カネはどこへ行った? 〔ちょっと追記あり〕

老後2千万円不足問題(年金以外に、老後の生活には2千万円の貯蓄が必要だと金融庁がサラッと発表した件)が世間を賑わせる中、阪急電鉄の中づり広告に、

毎月50万円もらって毎日生き甲斐(がい)のない生活を送るか、30万円だけど仕事に行くのが楽しみで仕方がないという生活と、どっちがいいか。」

だとか、

私たちの目的は、お金を集めることじゃない。地球上で、いちばんたくさんのありがとうを集めることだ。」

というキャッチコピーを出して批判が集中しているようです。

www.asahi.com

朝日新聞は「月収の基準がずれている」とタイトルをつけていますが、それより私は、これぞ「やりがい搾取」ではないかという点が気になりました。

希望者が多いやりがいのある職種は、待遇が悪くても人が集まるため、劣悪な労働条件が業界慣行となっているようなところもあるそうで、それを指す言葉です。例えば若者に人気のアニメ制作だとか、アパレルだとか、編集、TVの製作だとかが、ぱっと思い浮かぶところでしょうか。

やりがいがあるんだろうから給料は下げて良い、それは経営として合理的な選択であり、正しい、などという風潮があるように感じますが、「大事なのはお金じゃない」みたいな一見正論じみたことを経営側がいうのはおかしいでしょう。

話は変わりますが、オプシーボやキムリアといった1回数千万円かかるような超高額医療薬が保険制度を崩壊させるのではと数年前から話題になっていますが、少し前、ノーベル賞受賞者の本庶博士が製薬会社からの分配が不当に低すぎると製薬会社に訴えるというできごともありました。

新規開発薬の超高額な値段に対して、開発費用などから仕方がないという説明を読んだことがありますが、オイオイ、開発に関わった研究者にすらカネは渡っていなかったの!?と結構衝撃でした。(まあ、これらの薬はオーダーメード式なので高いという理由はあるようですが、それにしても)。この薬価は果たして妥当なものなのでしょうか。それとも、命を盾に「現行の制度ならこれぐらい取れるから取ってやろう」という価格設定になっているのか・・・。

mainichi.jp

じゃあそれはどこに行っているんでしょう。

企業ですか?

この両方の件、国の医療保険財政を傾かせるほどの薬価は、そして、一生真面目に働いても子供2-3人を産み育て、老後に生活するだけの貯蓄をする余裕も持たせない低い賃金で浮いたカネは、どこにいったのでしょう。

年間数十億もらっていた渦中の某G氏や、宇宙旅行に数百億円使うと自慢気だったアパレル系有名企業の某M氏を見てわかるように、今や青天井の企業経営者の報酬にいっているのでしょうか…?

内部に着々とためられているのでしょうか?

金融庁や政権を擁護するつもりは別にありませんが、「なぜこうなっているんだろう」と考えると、(昭和時代はともかく)お役所が年金保険料を無駄に浪費しているからということではなく、結局ここにいきつくように思えてならないんですよね。

国は企業が自由に経済活動を行って成長することは国の繁栄に繋がるので良いことだと考え支援します。その結果、トップだけが肥え太って割を食った人々があふれたり、そうした人々を年金や福祉で助けるために財政が傾いたり、保険制度が危機に瀕するのでは意味がないのではないでしょうかね。

自由競争はもちろん必要だし健全に行われるべきだと思いますが、この青天井は何か良いことあります?正当なものと言えるでしょうか?

 

〔追記〕

冒頭で言及した老後二千万円問題ですが、これに対して自民党の二階氏が「選挙も近いんだからそちらのことも考えてもらわないと」とあたり前のように発言していました。

つまり、与党が批判されるようなことがあると、夏の選挙を戦わなければならない与党の参議院議員の皆さんが苦戦を強いられる可能性があり、迷惑がかかるんだから、それを考えろ!ってことですね。

よくもまあこんなことを当然の顔をして言えたものです。

「この問題に関してまず重要なのは選挙に勝つか負けるかに対する影響です!」と言っているようなものであって。政治家の本音かもしれませんが、まず気にするべきはそこじゃない。

この二階氏はつくづく失言大王ですね。というか、話し方がうっかりなのではなく、彼の考え方そのものが、現代一般社会では批判される類だということでしょうね。

 

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