貧困を想像することは難しいようだ

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最近、ネットサーフィンをしていて、とある記事を目にしました。

ブログでエンジニア関係などの情報を発信するなどで成功し、かなりの収入を得ているという人物、R氏のブログ記事です。

彼は能力と意欲にあふれた若者のようで、死にたいと思ったことは一度もないのだそうです。そして、自殺しようなどという人の気持ちが全く理解できないので、自殺理由を潰す(論破する?)あるいは、彼が理解できないという理由を解説するという記事でした。

 

その記事中で、経済的理由で命を絶とうというなど意味不明だ、という理由として彼が挙げていたのが、次のようなものでした。

 

・月に15万ぐらいあれば生活できる。

・時給1000円で150時間(一般的フルタイムの労働時間)で稼げる。

・150時間働けない人は、生活保護を受けることができる。

 

なので、日本では経済的理由で命を絶つまでに至るはずがない、「はい、論破」と彼はいいます。(このフレーズ、まともに議論していないような印象しかないので、使わない方がいい気がしますけれど)

 

命を絶つ理由となるのかは別として、現代の日本でいかに貧困が蔓延しているかなど、情報はあふれているようで、やはり豊かな人には想像がつき辛いのだろうなと思います。

 

まず時給で働いている人が、ちょうどよく150時間/月程度働けるなどとは、全くもって限りません。お店などの都合で、多すぎたり少なすぎたりさせられるのです。悪質なところなど、仕事へ行こうと電車に乗った後で、電話がきて「今日はお客さんが少ないから来なくていいよ」などと身勝手なことを言い出したりします。交通費だけかかり、仕事はなくなる。いきなりその時間だけ、都合よくほかの仕事を入れることなど、普通はできません。

あるいは、150時間確保するためには、お店にとって都合の良い存在にならなければと、過酷な長時間労働、夜勤、連勤を課されることもあります。

また、個人営業の店などでは、契約書もタイムカードも給与明細もなく、数か月分の給料を踏み倒されたなどというケースも、珍しくはありません。

労基へ行け?そんな事例で、残念ながら実際に何かしてくれるわけではありません。人手などのリソースは有限ですので。

こうしたブラックバイトがいかに蔓延しているか、驚くばかりですがこれが実態です。

そして、疲労と栄養状態の悪さなどから、例えば1シーズンに2回インフルエンザにかかってしまったら?収入は激減し、医療費がかさみます。

例えば骨折といったケガであれば、痛みが残りながらそれまでのように過酷なアルバイトをこなせなくなるかもしれません。言うまでもなく、この程度で生活保護は受給できないでしょう。

そして、「店にとって都合の良い存在」でなくなったアルバイトは、シフトを思うように入れてもらえなくなります。ダブルワークをしようと別の仕事を探すと、「君、入れる時間が限られていて使い勝手が悪いね」と言われてやはりあまりシフトを入れてもらえず、かといって、新しい仕事1本で、でいきなりフルタイム並みの時間は働かせてもらえない。

 

これに加え、シングルマザー/ファーザーで子供を抱えていたら?中高年となり、時給制の仕事は若者を優先されて、思うようにシフトを入れてもらえなくなったら?

年金生活で、田舎の持ち家で暮らしている老親に、医療費の援助を頼まれたら?(一般的には持ち家があると生活保護は受給できません)

ギリギリで回す生活は、急な出費で途端に立ち行かなくなります。

「バイトのシフトを入れてもらえないので生活保護を受給したい」と言って、認められるでしょうか?

家賃を後回しにして滞納し、ついに立ち退きを迫られてしまったら?

 

くだんのR氏は、コンビニのカウンターに150時間突っ立っているだけで生きていけるのに、なぜ死ぬのか?と言います。

彼は心から、不思議に思っているのでしょう。

しかし、想像力が足りていません。圧倒的に。