池上彰氏の専門家の見解盗用疑惑報道について

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ニュースや世界情勢をわかりやすくTVで解説することで有名な池上彰氏。

彼の番組から取材(特定のテーマに関しての情報、分析、考察などを提供することと思われる)を受けた専門家が、『池上の番組の方針で、番組では〇〇さんの意見ではなく池上の意見として紹介しますがご了承いただけるでしょうか』といわれたと暴露して話題になっています。

面白いことに、管見の限り大手メディアはこの問題を報道していないようですね。

池上氏本人はこれに対して、次のように否定しています。

「特定の先生が言ったことを自分の意見として言うことは、あってはならないことだし、ありえないことだと思います。(中略)そもそも、私の番組では、(中略)私個人の意見は言わないスタンスでいます」

池上彰氏の番組はyoutubeにも数多くあげられていますし、本も多数出版されています。私の勤務先である教育困難大学の学生にもわかりやすそうな内容なので、本は買ったこともあります。非常に人気がありますね。

 

私は取材されたことはありませんので、真偽のほどはわかりませんが、この問題に関しては一言モノ申したく記事にします。

結論だけ先に言いますと、

「だろうね。やっぱりね」

です。

専門家の見解をあたかも自分のもののように言ってでもいないと、あの芸当は無理だろうと、一研究者として思います。

一方で、池上氏の釈明にある「私個人の意見は言わないスタンスでいます」。これも、恐らく(彼本人の認識としては)事実なのではないでしょうか。

「この問題に関しては、AとBで議論が分かれているが、Aが正しいと思う」というようなことは言わない、という意味で、「自分の意見は言わない」と彼は言っているのでしょう。

しかし池上氏、例えば「〇〇国でこんな社会現象が起きている。その背景にはこうした複雑な歴史、社会的要因があるようだ」というようなことは言っています。

それは、「〇〇国で何月何日にこんな出来事がありました」というような調べれば誰もが簡単にわかることではありません。

それなりにその事象や国に関する知識の蓄積と、その分野のディシプリンが必要な考察、分析です。当たり前のように世界の無数のイシュー、現在進行中の最新イシューもに専門的分析、考察をも含めてさらっと披露してのける池上氏に、これはご本人の知識なわけがなかろう、とは薄々思っていました。基礎から知識を積み上げ、膨大な情報から自分で分析した結果の解説とは思えません。

なにも、自力でなければ紹介してはいけないというのではありません、しかし、ニュース番組などの場合、一般的には、専門家を呼んだり、少なくとも専門家の名前を出してパネルなどで発言を紹介するといった方法で、「専門家の〇〇先生はこうおっしゃっています」という形にするのではないでしょうか。

専門家は一つのテーマに長い時間をかけて専門性を培い、分析できるまでに至るのです。そうした苦労があっても専門家の言葉を「〇〇先生談」として紹介せず、自分のもののように述べてしまっているとすれば、それは間違っていると私は思います。

彼自身が「(AとBのどちらが正しいと思うかといったような意味では)自分の意見はそもそも言っていない」と否定していても、(私の推察が正しいとすれば、それは)パクリと言われても仕方ないレベルだでしょう。

もちろん、一般的的な視聴者に比べて幅広い知識はお持ちなのでしょうし、わかりやすく説明する能力は突出したものをお持ちなのだと思います。それならば、正々堂々と知らないところは知っている専門家の力を借り、それをオープンにした上でやって欲しいなと思うところです。

私の知人にも、マスコミに知識の提供を求められて番組にとって都合よく、本人にとっては非常に不本意な形でそれを使われたり、納得できない編集を加えられて、マスコミ嫌いになったという研究者が数名います。

研究者などの専門家とメディア、お互い尊重し合いながらwinwinの関係性を築いていって欲しいものです。

 

 

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